グラフィックデザイナーは、スクールで学んでから就職するのが一般的ですが、独学で挑戦することもできる職業です。
新型コロナウイルス感染症の流行によって、おうち時間が長くなったり、収入が不安定になるなど様々な影響の中で、勉強に注力する人が増えています。
中でも、専門職で、かつリモートで働くことが可能なグラフィックデザイナーの人気が高まっています。
グラフィックデザイナーに、まずは独学でチャレンジしてみたいという方も多いのではないでしょうか。
この記事では、グラフィックデザイナーになるための独学方法やおすすめの本、独学のメリット・デメリットについてご紹介します。
独学でグラフィックデザイナーになれるのか
グラフィックデザイナーになるために必要な資格はありませんので、独学でも目指すことができます。
ただし、グラフィックデザイナーは実績と実力がなければプロとして認めてもらうことが難しい職業です。
独学の場合、実績や実力をアピールすることが難しく、なかなか案件獲得に至らないのが現実です。
スクールを卒業していなくても応募できる求人はありますが、実際は即戦力であるスクール出身者を優先している場合が多いです。
また、独学は勉強に時間がかかったり挫折してしまう場合もあるので、スクールで学ぶのがグラフィックデザイナーになる近道です。
グラフィックデザイナーとは
グラフィックデザイナーは、ポスターやチラシ、本のカバーや雑誌の表紙などさまざまな印刷物のデザインを制作する仕事です。
テレワークが可能だったり、独立できるなど、自由な働き方を目指している人にとってはとても魅力的な職業と言えるのではないでしょうか。
グラフィックデザイナーは1人で作業しているイメージがありますが、実際はディレクターやコピーライターなど他のスタッフとの協力が不可欠です。
そのため、デザインの技術だけではなく人柄も重要視されます。
また、制作したデザインに対して何度も細かい修正が入ることがあり、根気強さが求められる職業でもあります。
グラフィックデザイナーに必要なスキル
グラフィックデザイナーになるためには、デザイン技術が身に付いているのはもちろんのこと、PhotoshopやIllustrator、InDesignなどのグラフィックソフトを扱う能力が必要になります。
デザイン技術は才能やセンスと考えている人も多いですが、実際は経験と知識によって身に付くスキルです。
「自分には才能がないから」「センスが悪いから」と諦めずに、レイアウトや色彩を学んでクオリティーの高いデザインができるように努力することが大切です。
制作では、今は手描きではなく、グラフィックソフトを使用するのが一般的です。
グラフィックソフトはAdobeのPhotoshopやIllustrator、InDesignが現場では主に使われています。
またその他に、きちんとヒアリングができるコミュニケーション能力や、どうしてこのデザインになったのか納得させられるプレゼン能力も重要です。
独学でグラフィックデザイナーを目指すための心得
独学の落とし穴である、「時間がかかる」「勉強をやめてしまう」「実力不足」を防ぐためのポイントをご紹介します。
目標設定
独学を始める前に、「女性らしい柔らかいデザインの得意なグラフィックデザイナーになりたい」「雑貨屋で売っているようなオリジナルのトートバッグを作りたい」など、できるだけ具体的な目標や目的を決めましょう。
「すごいグラフィックデザイナーになりたい」「なんでもいいからグッズを作ってみたい」のように漠然とした目標では、勉強でつまずいたときに自分に必要なものがわからず、グラフィックデザイナーになることを諦めてしまう原因になりかねません。
目標設定が今の段階では難しいと感じる人は、好きなグラフィックデザイナーを見つけるという方法もあります。
憧れのグラフィックデザイナーの存在は、独学が苦しくなった時の励みになるでしょう。
目標達成までの期間
「1ヶ月後にクラウドソーシングのロゴのコンペに提案する」「3ヶ月後のイベントに向けて、オリジナルのTシャツをデザインする」のように、目標とあわせて明確な期間を決めましょう。
期間が明確だと、逆算してスケジュールを立てやすくなります。
締め切りまであと何日という感覚はプロになっても必要です。
また独学の場合、具体的なスケジュールがないと、「1日くらい休んでもいいか」という気持ちになりがちです。
「いつまでに何をやり切る」という決心があると、モチベーションを維持しやすくなります。
アンテナを張る
今、グラフィックデザイナーに何が求められているのか、常にアンテナを張って情報をアップデートすることも重要です。
特に独学では、現場のリアルな情報を手に入れることが難しく、新しい技術に置いていかれてしまっている場合があります。
SNSなどを活用して、最新の情報を調べる癖をつけましょう。
たくさん制作する
グラフィックデザイナーを目指す上で何よりも大切なのは、手を動かしてたくさん制作をすることです。
まず制作物の目的を決め、必要な要素を洗い出し、いくつかラフデザインを制作します。その後本制作を行い、プロが同じ目的でデザインした制作物と比較してみましょう。
自分の制作物を客観的に見直し、悪い部分や足りない要素を見つけ、再度作り直します。
このように地道な作業を何度も何度も繰り返すことで、デザインスキルが磨かれていきます。
グラフィックデザイナーになるための独学方法
グラフィックデザイナーの独学におすすめな本と動画サービスをご紹介します。
本で学ぶ
デザインの基本
『なるほどデザイン 目で見て楽しむ新しいデザインの本。』
筒井 美希(著) エムディエヌコーポレーション
全272ページの、白い表紙に人の顔のイラストが印象的な本です。
デザインの基本が写真や図、イラストでわかりやすく説明されています。
デザイナーがどのように考えてデザインをしているのかを知ることができます。
グラフィックソフトの使い方
PhotoshopとIllustratorの入門書を「できるよくばり入門」シリーズから2冊ご紹介します。
『初めてだけど、いっぱいやりたい!Photoshopよくばり入門』
senatsu (著) インプレス
基本操作からワンランク上の作品作りまで、全271ページで丁寧に解説しています。
作例が豊富なので、自分の制作したいものに必要な操作を効率的に学ぶことができます。
『初めてだけど、いっぱいやりたい!Illustratorよくばり入門』
石川洋平、清水健次、堀内良太(著) インプレス
『初めてだけど、いっぱいやりたい!Photoshopよくばり入門』のIllustrator版です。
現場で使う機能やデザインの理屈、具体的なテクニックが詰め込まれています。
デザインスキルを高める
『やってはいけないデザイン』
『失敗しないデザイン』
平本久美子(著) SHOEISHA
『やってはいけないデザイン』はノンデザイナー向けの入門書ですが、実例が多くデザインのインプットに役立ちます。
やってはいけないデザインと修正したデザインを見比べることができ、やってはいけないポイントと修正ポイントがわかりやすく書かれています。
『失敗しないデザイン』は『やってはいけないデザイン』の姉妹本です。
どちらの本でもデザインの修正を擬似的に体験できるので、自分の制作物に当てはめて考えることでスキルを磨くことができます。
レイアウトについて学ぶ
『[デザイン技法図鑑]ひと目でわかるレイアウトの基本。』
大里浩二(監修)MdN編集部(編) エムディーエヌコーポレーション
レイアウトにおける基本の型や考え方、文字・写真・図版・配色の収め方や演出の仕方がひと目でわかるように解説されています。
レイアウトの本だけあってとても見やすいので、飽きることなく読み進められます。
おすすめのシリーズ
『けっきょく、よはく。余白を活かしたデザインレイアウトの本』
『ほんとに、フォント。フォントを活かしたデザインレイアウトの本』
『あたらしい、あしらい。あしらいに着目したデザインレイアウトの本』
『いろいろな、いろ。配色に着目したデザインレイアウトの本』
ingectar-e(著) ソシム株式会社
シリーズ累計35万部を突破した定番のデザイン書です。
新人デザイナーのNG作例を、ベテランデザイナーがOK作例に修正するという設定で解説されています。
新米デザイナーの悩みに共感しつつ、ベテランデザイナーのアドバイスに納得しながら学習ができる楽しい本です。
動画で学ぶ
Creative Cloudチュートリアル
AdobeのWebサイトにはラーニングとサポートが用意されています。
チュートリアルの「ことはじめシリーズ」では、Photoshop、Illustrator、InDesignの基本を無料で学ぶことができます。
「Photoshopことはじめシリーズ」では、色補正の基本や合成テクニックなどPhotoshopを代表する技術を紹介しています。
番外編のPhotoshopとLightroomの使い分けは、デザイナーとしてぜひ知っておきたい知識です。
「Illustratorことはじめシリーズ」では、アイコンの作成や印刷物の作成を、イラストの書き方を学べます。
基本・応用・実践がわかりやすくまとめられているので、効率的にIllustratorでできることを把握できます。
「InDesignことはじめシリーズ」では、チラシを作る方法や複数ページのレイアウトについて学べます。
Step3のIllustratorとInDesignの違いと使い分けはグラフィックデザイナーを目指す人にとっては必見の内容となっています。
Youtube
YouTubeではグラフィックデザインに関する有料級の動画を無料で見ることができます。
ただしコースとは違い、1からステップアップして解説されていることは少なく、ピンポイントの技術を紹介している場合が多いです。
そのため、辞書のように知りたいことを検索して活用することをおすすめします。
例えば、Photoshopでクリッピングマスクの使い方がわからなかったら、「Photoshop クリッピングマスク」と検索すれば、さまざまな解説動画を見つけることができます。
オンライン講座
今や利用していない独学者はいないほど一般的になったオンライン講座。
グラフィックデザインに関する講座もたくさんあるので、豊富なコースの中から自分に必要なものを選ぶことができます。
動画を見るだけでなく、講師に質問したり、過去の質問と回答を見ることができたり、添削をしてくれるサービスもあるので、学習のつまずきを解消してくれます。
独学でグラフィックデザイナーを目指すメリット・デメリット
独学にはメリットもありますが、デメリットもあることを忘れないようにしましょう。
スクールであれば解消できるデメリットがたくさんあるので、自分に合った学び方を見極めることが大切です。
独学のメリット
お金をかけずに学べる
Webサイトの情報を集めたり、無料の動画を探して学べば、お金をかけることなく知識を身につけることができます。
ただし無料のサービスを利用する場合は、その情報が本当に正しいのか見極める力が必要です。
また、自分に合った情報が良いタイミングで手に入るとも限らないので、効率的に学ぶことが難しい場合があります。
自分のペースで学べる
独学なら学ぶ時間や場所を自由に選ぶことができます。
自宅やカフェを利用するイメージがありますが、学習のための環境ではないため、実際は集中して勉強ができていないということも多いです。
おすすめは図書館の自習スペースを利用することですが、平日の午後や土日は利用者が多いため、席が確保できない場合もあります。
独学のデメリット
自己管理が難しい
明確な目標を決め、スケジュールを立てても、独学だと計画通りに行かないことがままあります。
スケジュールを守らなくても、もっと言ってしまえば目標が達成できなくても、誰にも咎められることはありません。
絶対にやり切るという固い決意と自分を追い込む覚悟が独学には必要なのです。
決意と覚悟は、できれば格好いい、できなければ意志が弱いという問題ではありません。
大切なのは少ない労力でモチベーションを維持する努力をすることです。
スクールに通い、仲間を作って講師の指導を受けることも、自己管理のためにできる努力の一つではないでしょうか。
制作物を客観的に評価できない
どんなにたくさん制作しても、独りよがりのデザインを続けていては成長することができません。
しかし、せっかく頑張って制作したデザインを自分で厳しく評価することはとても難しいことです。
家族や友人にデザインを見せるという方法もありますが、グラフィックデザイナーの知識がない人の意見になるので、取り入れるべきかどうかの判断に迷うこともあるでしょう。
それに比べてプロの講師の意見は、たった一言で自分を大きく成長させるきっかけになることもあります。
応用まで学ぶことができない
プロが実際にどのように制作をしているのか、独学ではなかなか知る機会はありません。
応用を知らないままでは、仮にグラフィックデザイナーになれたとしても、非効率な作業を続けてしまうことになりかねません。
制作の後半である修正の段階では、納期が迫っていることが多く、作業の速さが求められることもあります。
スクールでは、実際の制作を通して基礎から応用までを丁寧に学ぶことができます。
グラフィックデザイナーの繋がりができない
グラフィックデザイナーの繋がりがあると、仕事で悩んだときにアドバイスを受けたり、仕事を紹介してもらえることがあります。
また、仕事が増えすぎてしまった場合に手助けしてもらうこともできます。
独学では共に学ぶ仲間を作ることや、プロとの繋がりを持つことは簡単ではありません。
独学をしている間も、グラフィックデザイナーになっても、1人で乗り越えることが難しい課題は必ず現れます。
1人で悩まず、スクールのように仲間を作れる環境へ身を置くことを検討しましょう。
現場で必要な知識を得ることができない
グラフィックデザイナーの実務には、独学では絶対に学ぶことができないことがあるということを常に頭に入れ、謙虚に学習に励んでください。
そして、現場で必要な知識がないということが、就職に不利になるということも忘れないでください。
スクールを卒業していることは、即戦力であることの証明になり、就職活動において有利になります。
グラフィックデザイナーとしての働き方
広告代理店やデザイン制作会社などの企業に就職する場合と、フリーランスで活動する方法があります。
現場で必要な知識を持っていない状態でフリーランスになることは現実的ではないので、まずは企業に就職するのが一般的です。
広告代理店のような大手企業への就職を目指す場合、チームで仕事をすることを念頭に入れなければなりません。
複数人で制作するため、デザイン力だけでなく、コミュニケーション能力や人柄も重視されます。
また、デザイン以外の仕事も多くあるので、視野の広い人材が求められます。
そのため、独学でデザインのみを学んだだけでは就職が難しい場合があります。
デザイン制作会社は即戦力を求めている場合が多く、採用ではポートフォリオを重視しています。
スクールで学び、講師の指導を受けたスクール出身者のポートフォリオと戦わなければならなりません。
また独学の場合は現場の知識はないとみなされるので、学習能力が高い人材かどうかが重要視されます。
現場の仕事をすぐに覚えられるかどうかを見られているということです。
独学に時間をかけてしまっていると、その能力に乏しいと思われてしまうこともあります。
フリーランスは就職活動の必要はありませんし、自分のペースで働けるので憧れている人も多いでしょう。
今はクラウドソーシングで案件を獲得する方法がありますので、フリーランスになりやすくなっています。
しかし、同じ案件に多くの実績のあるグラフィックデザイナーやスクール出身者が提案をします。
それを実績のない独学者が勝ち抜くのはとても大変なので、長く仕事を受注できない期間があるということも覚悟しておいてください。
ハードルの高い独学よりスクールがおすすめ
スクールではアナログとデジタル両方の制作スキルを学ぶことができます。
また、デザイン以外にもグラフィックデザイナーに必要なノウハウを身につけるためのカリキュラムが用意されています。
アナログの授業で手描きの作業を学ぶ
描画の土台となる技術をはじめ、手描きの作業を行います。
具体的には、デッサン・ドローイング、イラストレーション、カラーデザインなどを学びます。
デッサン・ドローイングでは、鉛筆や木炭などの画材を使った本格的な制作ができます。
イラストレーションでは、似顔絵や文庫本の表紙など、幅広くイラストを学ぶことができます。
カラーデザインでは、「カラーデザイン検定」の資格取得を目指すことができます。
デッサンやイラストは独学では学ぶことが難しい技術です。
イラストを描くことができれば素材に妥協することなく、思った通りのデザインが制作できます。
デジタルの授業で学びながら制作する
アプリケーションの使いかたを学びながら制作し、応用技術を身につけます。
Webデザイン基礎、CG基礎・応用、アドデザイン基礎・応用、エディトリアルデザイン、グラフィッククリエーションなどの学習ができます。
Webデザイン基礎では、Webサイトのデザイン方法やアニメーション作成ソフトの操作方法を学びます。
CG基礎・応用では、画像編集やグラフィック用ソフトの操作方法を基礎から応用まで、制作を通して身につけます。
アドデザイン基礎・応用では、広告に関わる制作を実際に行います。名刺やパッケージデザイン、ポスターなどを作れるようになります。
エディトリアルデザインとは新聞や雑誌、書籍、などのなどのページ数が多い紙媒体のデザインです。読者の視線や印象を計算し、効果的な紙面をデザインする技術が必要となります。印刷・出版用ソフトの操作を学びながら、フリーペーパーなどの紙面をデザインします。
グラフィッククリエーションではアナログとデジタルの違いを考慮し、それぞれに適した表現方法を学習します。
Webデザインについて学ぶことができるなど、デザインについての知識や技術を網羅的に身につけることができるのはスクールのカリキュラムがあってこそです。
短期間で効率的に、幅広い制作ができるグラフィックデザイナーを目指しましょう。
企画・運営の知識を身につけられる
コンセプトメイキングとプランニングスキルを学びます。
コンセプトメイキングでは、実際に企業から依頼される課題を扱い、自身で商品企画・開発を行います。
課題を通して、スケジューリングや運営についても考えることで企画に必要なスキルを漏れなく身につけられます。
プランニングスキルでは、ゲーム・イベント・販促の企画から運営までを学びます。
実務を想定して、利益を考えたプランニング力を磨くことができます。
企画・運営の知識があると、クライアントの目標や課題をきちんと捉えてアイディアを出すことができ、より効果的なデザインを制作することが可能になります。
グラフィックデザイン専門学校・スクール・講座おすすめ10選!
社会人におすすめのグラフィックデザイン専門学校・スクール・講座10選
まとめ
本記事では、グラフィックデザイナーに必要なスキル、独学でグラフィックデザイナーを目指すための心得、独学方法、グラフィックデザイナーの働き方、独学のメリット・デメリット、スクールがおすすめな理由についてご紹介しました。
グラフィックデザイナーは学ばなくてはならないことが幅広く、独学でグラフィックデザイナーになることは簡単ではありません。
長い時間をかけて独学で勉強するより、スクールで効率的に学び、1日でも早くグラフィックデザイナーになることを目指してはいかがでしょうか。